好きを仕事につなげたひと

アパレル出身。夢を実現させたwhole綱川禎子さんの転身劇

SPECIAL HOLICS編集部 2019.6.9

今回インタビューした綱川禎子さんは、アパレル業界からフローリストへと転身した経歴の持ち主。人気セレクトショップで販売員・VMDを担当した後、フラワーショップで2年間修業し、念願だった自分のお店「whole」をオープンさせました。「まさか自分が花屋を持つことになるなんて......」と語る綱川さんの躍動的なお仕事ストーリーをお届けします。

アパレル業界からフローリストに転身。きっかけは突如生まれた独立心から。

ブーケやフラワーアレンジメント。心を込めた贈り物は、さりげないけれど個性的、かつ贈り手のセンスが感じられるものを見つけたいもの。そんなおしゃれに敏感な女子たちのハートをわし掴みにしているのが、代々木にあるフラワーショップ「whole(ホール)」。オーナーの綱川禎子(つなかわ・よしこ)さんが作るブーケは、シックだけどまとまりすぎず、遊び心に富んでいて......まるでファッションのスタイリングを見ているようで、おしゃれ心が刺激されます。

それもそのはず、綱川さんは人気セレクトショップで販売員・VMDを担当した後、フローリストを目指したちょっぴり異色な経歴の持ち主。センスの塊のような彼女だからこそ成し得るフラワーアレンジメントの極意や、フローリストに転身したきっかけなど、見どころ満載のインタビューです。

スタートが遅いぶん、経験が浅さをアパレルで培ったセンスや知識で補います

重たい鉢や花器を運んだり、水仕事が多い勤務中も「自分のスタイリングも含めた世界観を大切にしたい」と、おしゃれに気を抜かない綱川さん。足元もお気に入りの靴を選んではいているそう。左からA.P.C、セリーヌ、マノロ・ブラニク。

ーー「whole」をオープンさせたのはいつのことですか?

2017年4月です。修行として勤務していた「リトルショップオブフラワーズ」を卒業するタイミングで、学生時代にアルバイトをしていた飲食店の店長から「営業していない昼の時間帯なら店を使っていいよ」と声をかけていただいたんです。これもご縁だと思い、富ヶ谷のワインバーの一角を借りて、週末限定の店をはじめたのがきっかけでした。その2年後に美容師の夫の独立が決まり、念願だった花屋とヘアサロンが併設した新店を本格的に始動させたところです。

ーー珍しい花が多いなと感じたのですが、セレクトのこだわりは?

オーダーに合わせて仕入れているので、毎回同じ花を置くことはほとんどなく、そのときどきで変えています。素材や色もそうなんですが、花と花のコーディネートが楽しめるようなセレクトをモットーにしています。

ーー営業をしている週末以外はどんな仕事を?

ウエディングのブーケの制作が圧倒的に多いですね。最近は会場のコーディネートや個人のギフトオーダーも増えてきています。

ーーどのようにして仕事が舞い込むようになったのでしょう?

お客さまがSNSに店のアカウントをタグ付けしてくださったのを見て、来てくれる方もたくさんいらっしゃいます。あと、ありがたいことに紹介がほとんどです。「リトルショップオブフラワーズ」にいたときから「自分の店を出したい」と公言していたので、オープンと同時に周りの友人たちがたくさんオーダーしに来てくれます。事業に失敗したときのために内緒にしておくという手もあったのですが(笑)、目標を口することで重みが出るかなと思って。花屋になりたいことが周りに伝わり、みなさんが応援してくれていることが大きく影響していると思います。中には、まったく連絡をとっていなかった小学校の友達がSNSで連絡をくれて、オーダーをもらったことも。

ーー今や素敵な花屋さんがたくさん存在しますが、やはり他店と比べて自信をなくしたりすることもありましたか?

はい、ありましたね。おしゃれで素敵な店はたくさんある。でも、私は技術的にもまだまだこれから。「そんな自分ができることって何だろう?」と考えたとき、やっぱりアパレル経験のあるフローリストって珍しいなと思って……。

花同士の色や素材のコーディネートは、前職が活かされていると思います。移転前の店はあくまでもレンタルスペースで、自分の世界観を表現するのが難しかったのですが、今の店では空間作りにも力を入れています。経験が浅くスタートが遅いぶん、アパレルで培ったセンスや知識で補っている感じです。

絶対に受かりたかったので、JIMMY CHOOのサンダルをはいて臨みました

ポストロックを代表するバンド「アルバム・リーフ」。「昔から大好きでよくライブにも行きます。仕事中によく流しているのですが、とくに雨の日や、市場から戻ってきたまだひんやりとした朝に聴くのが好きです」

ーーアパレル時代はどんなお仕事を?

セレクトショップに勤務し、販売とVMDを担当していました。ちょうどその店がアメリカから日本に上陸したくらいのときで、販売スタッフの募集をしていたのでやってみたいなと思って。

それで、面接に行く前にお客さんとしてその店に行ってみたんです。そしたら、今までにない接客に衝撃を受けて。お客さんとの距離のとり方がとにかく絶妙だったんですよね。

ーー他の店とどういうところに違いが?

お客さんが店に入って来たら、まず普通は「いらっしゃいませ」と言って迎えるじゃないですか。でもその店は「こんにちは」なんですね。そのあとは「何かあればお声がけください」と言って、お客さんにつきっきりではないんです。それがすごく心地よくて、ついつい長居してしまって、結果JIMMY CHOOのサンダルを買ったんです。買うつもりはなかったはずなのに(笑)。

ーーその後の面接もスムーズに通過を?

はい。ただ経験者優遇だったので、未経験の私は不安を抱きながら書類を出しました。そしたらラッキーなことに本部の方から面接の連絡をいただいて。絶対に受かりたかったので、店に行ったときに買ったJIMMY CHOOのサンダルをはいて臨みました。そのことを面接でも伝えると、「おもしろいね。はじめてだろうけどやってみよう!」と言っていただき、結果は採用!

実際に、当時の面接にはいて行ったというJIMMY CHOOのサンダルは、今でも大切に手元に置いてあるそう。

ーー未経験の仕事となると、たくさん苦労もあったのでは?

初期メンバーは、販売員として経歴のある方ばかり。私よりも年上の方ばかりでしたので、販売経験のない何も分からない私に一つずつ丁寧に教えてくださりました。もちろん時には怒られることもありましたが、仕事以外でも仲良くしていただいて、とても人に恵まれた大好きな職場でした。また、30代後半から40〜50代のお客さまが中心のお店だったので、20代前半だった私はお客さまにまで可愛がっていただいて......。自宅に招待していただいたり、着なくなったお洋服をいただいたことも(笑)。その方たちとは今でもつながりがある大切な関係です。

ーー途中で販売から店舗VMD担当へと移ったきっかけは?

入社して半年くらい経った頃でしょうか。「せっかく店に入ったならば、ディスプレイも学びたい」という意欲が湧いてきたんです。ただ、すぐには叶わず。それから半年ほど経ってから、店舗VMDのアシスタントからはじめることになりました。

ーーVMDの仕事でいちばんの楽しみ、やりがいは?

どのようにすればお客さまの目に留まりやすいのか、商品のディスプレイを考えるのがVMDの仕事なんですね。その店は、週替わりで次々と新作が入ってくるので、毎週のようにディスプレイを考えるのがすごく楽しくて。VMDの上司に憧れていて、「その人のようになりたい」という気持ちも強かったと思います。

やわらかな雰囲気なのに、自分に対してはとにかく厳しくて。目の美しい女神みたいな人で。

「なぜこんな風にディスプレイをされたんですか?」とか「これとこれだったらどっちを選びますか?」など、分からないことはガンガン質問していました。自分の感性は大事なんですが、上司だったらどっちを選ぶのか。その方のクリエイティブが知りたかったんですよね。手がけるディスプレイは、クリーンで洗練されていて、いい意味で棘がなく、それがまたすごく絶妙なバランスで。とても心を惹かれました。

夫から花をもらううちに、「花っていいな」と思うように

  • 1/2ページ
  • 1

関連記事&キーワード