好きを仕事につなげたひと

がんと闘う装花デザイナー関尚美さんの“好き”で紡ぐ幸せ仕事論

SPECIAL 2018.5.3

フラワーデザインの技術を用い、生花のみならずあらゆる素材で空間装飾やスタイリングを行う装花デザイナーの関尚美さん。昨年見つかった乳がんと戦いながら、ひたむきに製作をし続ける彼女が、生きる上で大切にしていることとは? 「例え間違った選択でも、自分が満足ならそれでいい」と語る彼女のストーリーから、好きを仕事につなげた理由に迫ります。

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「自分の死よりも、やっと手にした仕事ができなくなることが、だた悔しかった」

「お花の仕事でトップになる!」ある日、16歳の少女はそう胸に誓います。

それから、花屋でのアルバイト、フラワーデザイン専門学校、大手花屋、フラワーデザインルームでの勤務......と一途に花と向き合う毎日。そんな中、ともに独立を目指していたパートナーから、あるとき突然「やっぱり一緒にできない」と告げられた彼女は、花に対するすべての熱量を失い、花の世界から立ち去ることに。はじめて味わう挫折でした。

一時は「嫌悪感さえ抱いていた」という花の世界に舞い戻ったきっかけとは?

「“好きなこと”をして自分のために生きたい」と、再び花と向き合い“創ること”の喜びを知った関さん。製作に没頭する毎日の中、次に変化が訪れたのは33歳のとき。乳がんという辛い現実でした。

「自分が死んでしまうかもしれないということよりも、今まで頑張ってきて手にした仕事ができなくなってしまうと思うと、ただただ悔しかった」

それは、花の世界を志した16歳の頃から、長年にわたり“好き”と真正面から本気で向き合ってきたからこそ言えること。

「仕事も人生も、自分をいかに満足させられるかどうかがすべて」。そう語る関さんを支え続けているのは、“製作すること”への半端ない熱量にありました。

「もう限界だ」と思ったあとにいい案が浮かんでくる。だから絶対に諦めない

事務所を立ち上げたばかりの主人と初コラボした思い出深い作品です。主人がアートディレクションを、私がフラワーデザイン制作を担当。専門学校時代の花屋の同級生にも協力してもらい、花を液体窒素で固め火薬で粉砕しました。美しい写真を撮ってくださったのは、フォトグラファーの丸山和久さん。

ーー装花デザイナーとして、現在は主にどのような活動を?

イベントやお店の装飾が中心ですね。たまに、メーカーのビジュアル撮影のプロップやフードスタイリストとして入ることも。自宅サロンでネイルアーティストとしても活動しています。

ーーすごい。いろいろな才能をお持ちなんですね。

全然そんなことないです。フードスタイリストは専門じゃないので、お話をいただくたび「なぜ私なんだろう?」と、いつも不思議で(笑)。主人がアートディレクターをしているので、そのつながりで「ちょっとフードのスタイリングやってくれない?」と声をかけていただくことがあって。

ーー「やってくれない?」と言われてできるからすごいですよね。専門じゃなければ、普通できませんから。

フードデザインは、フラワーデザインと同じ感覚なんです。以前、自宅で作った料理を「フラワーデザイン的視点で盛りつけてみよう!」と思ってやってみたら、それがめちゃくちゃ楽しくて。だから、フードデザインの仕事も自然とできたのかもしれないですね。

アニメ「ドラえもん」に登場する「どこでもドア」を店名にしたカフェ「エニウェアドア(Anywhere Door)」ウェブサイトより。フードスタイリングを担当したときのもの。

ーーでも、肩書きはフードデザイナーと名乗ってはいないんですね。

そうですね。肩書きは装花デザイナーのみにしています。装花デザイナーという職業も、ライターの友人に命名してもらい、自分で勝手に作ったものなんですけどね。

お花で装飾をするけれど、扱うのはお花だけじゃない。フラワーデザインのテクニックを使っていろいろなものを作っています。例えば、最近だと熊本のプロジェクトチーム「Bridge KUMAMOTO(ブリッジ熊本)」の方々と、熊本地震の復興支援活動としてブルーシートを使ったコサージュを作ったり。

ーーそれもフラワーデザイン的感覚で作れるものなんでしょうか。

フラワーデザインで使うワイヤーを使うあたりは似ていますね。

はじめは、「ブルーシートで作るコサージュなんて、おしゃれにできない」そう思っていたけれど、本当に何度も何度も作り直して試行錯誤して。毎回、考え尽きてしまったあとにふとアイデアが出てくるから、きっと今回もそうだろうと言い聞かせながら。

いつもそうなんです。策を出し尽くして、「もう限界だ」と思ったあとにいい案が浮かんでくるんです。ダメだと思ったその先に必ずいいものが生まれる。だから絶対に諦めません。そこからが本当のスタートだと思っています。

熊本地震後、役目を果たし捨てられるはずだったブルーシートをビジューに使用したコサージュ。5/7(月)〜5/20(日) MARcourt DESIGNEYE代官山店、5/8(火)〜5/21(月)MARcourt丸の内店にて関尚美インスタレーション「丹(tan)」が開催。インスタレーションとともにコサージュを¥3,800(税別)にて販売します。(なくなり次第終了とさせていただきます)

「いちばんになれるかも」「やるからにはいちばんになれるものがいい」そう思っていました

メモしたりデザイン画を書いたりする“何でもノート”。もう何十冊も使い続けているけれど、白の無地と決めています。自分で書いた絵を見ながら装飾に必要なものを書き出したり、現場でざっとデザイン画を書いて、それをもとにいろいろと肉づけしていったり。

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HOLICS編集部

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