好きを仕事につなげたひと 

二つの“好き”に導かれ、殺処分0を目指す獣医平野さんの日常

SPECIAL 2017.7.24

「好き!」の熱量には説得力があり、「好き!」の裏側には、その人なりのストーリーがあります。そんなHOLICSのコンセプトを体現する人々をインタビューしていくシリーズ“好きを仕事につなげたひと”。今回は、小田原から電車で10分ほどの場所にあるSwing動物病院の院長・平野亜矢子さん(35歳)。「幼い頃から動物も“好き”だったけれど、父の影響で“お医者さん”にも興味があったんです」そう語る平野さんの、二つの“好き”が獣医という仕事になるまでを伺いました。

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日本に未導入のシステムを使って、動物実験も無くしたい

——今まで一年間振り返って、一番大変だったことって何ですか?
同じ毎日が繰り返されている状態なんですけど。大変だったのは何かな……(考え込む)。たぶんあると思うんですけど、忘れっぽいんですよね(笑)。

——仕事とプライベートのバランスをとるのも大変じゃないですか?
そうですね。それはだいぶあって、保育園で今先生が息子(5歳)を見てくれているから働けているんですけど、1日の手術の頭数が20頭とかになると仕事の時間内に終わり切らなくて。息子を迎えに行って、そのあとYouTube見せておきながからもう少し仕事して、みたいな感じです。

——では、逆にこの1年でいちばん嬉しかったことは?
街で耳カットした、私が手術したと思う子が元気にしてるのを見るのは嬉しいですね。こないだコンビニに行ったときに猫がニャーッて寄ってきて、どれどれって見たら耳カットしてあって。

出典: 公益財団法人 どうぶつ基金

不妊治療済みの印”さくら耳”。耳の先っぽをV字にカット。

——すごい! 漫画みたいですね。
もしかしたらこのコ、私が手術したコかなあ~? と思ったら「ニャーッ」て来てくれたので、嬉しくて。一方で、うちの病院では犬も診ているんですが、残念なのはそのコたちは“ブリーダー崩壊”のコたちが多いんですね。

——“ブリーダー崩壊”って何ですか?
“ブリーダー崩壊”というのは、例えば犬を繁殖させて、そのコたちをオークションにかけてビジネスしているブリーダーが、増えすぎて売れなくなって、そういうときにそのワンちゃんたちを保健所に連れていくんです。ボランティアさん達がそれを保護して里親募集するんですけど、そういうコたちがうちには結構来るんです。そういうコがたぶん全国にいっぱいいるんだろうなと思って。

出典: 公益財団法人 どうぶつ基金 Swing動物病院では、ワンちゃんの手術も行っている

——ボランティアの方々は、動物保護活動の大黒柱ですね。
そうなんです。すごいと思うのは、雪の日はさすがに捕獲に行かないだろうと思ったら、8頭も捕まえてきたり。犬が吠えている場所から依頼があって、一度行って何匹くらいか確認して、捕獲する日を決めて、2~3日前からエサを与えている人が増えている場所に行って「餌をあげないで」と話をして、捕獲する日に、餌を入れた捕獲器を仕掛けて捕まえるんです。ワンちゃん猫ちゃんのためですよね。皆さん本当に。

——とても時間がかかる作業ですね。
あと、私は実験動物に関しても思うところがあって。動物保護活動しているボランティアさんたちは、本当に1頭1頭の命をすごく大切にしているんですよ。一方で獣医大学は、勉強の為ということで獣医になるまでに結構な数の実験動物を使っていて。1回手術をしたからって就職先に「じゃぁ手術できますね」ってやれるわけではないので。とりあえずの経験だけの為の1頭は必要ないなと。

出典: 公益財団法人 どうぶつ基金 地元の人たちが置いた餌に群がる猫たち

——なるほど。では今後はそちらの方向にも取り組んでいけたらと。
はい。現状は妄想なんですけどね。シェルターが獣医さんを必要としていて、獣医大学としては学生が勉強のために治療する動物を必要としている。そこがうまく組めれば、お互いハッピーでいいんじゃないかと思っていたら、サモアに行ったときにニュージーランドの大学がそれをやっていたんです。もう十何年、実験動物を使っていないよって。

——サモアはお仕事ですか?
いえ、プライベートで。病院を開業する直前、去年の6月〜10月に、片道飛行機22時間かけて(笑)、3歳の息子とふたりで行ってきて。せっかく行くなら獣医に役立つところにと思って、安全で、子ども連れでボランティア活動ができるサモアを選びました。それから去年の夏、主人(上野動物園の獣医)とオレゴンのシェルターを見学したんですけど、そこも同じような感じで保護センターに大学病院の研修センターが併設されていて、そこのコたちのケアは獣医学生たちがトレーニングを兼ねて行ったり、避妊・去勢手術したりしていたんです。

日本からボランティアでやってきた獣医として、サモアの新聞が一面で平野さんを紹介。このボランティアで知り合ったドイツ人が、ちかじか『Swingどうぶつ病院』に来る予定があるそう。「とても楽しみです」(平野さん)

——そこがつながったら確かに素晴らしいですね。日本ではまだ無いんでしょうか?
無いんです、実は。今は手術の練習の為に学生たちは犬を使って、その使った犬は命を落としているんです。でもシェルターのコたちだったら、手術をして里親さんを探してそのまま生き続ける。学生にとっても、命を頂いての練習よりいいかなと。保護施設は、避妊去勢手術を必要なコがたくさんいるんです。もちろんきちんと指導員をつけた上で、学生がそのコたちを無料で手術するという方法がとれると思います。

——日本にまだないこのプロジェクトは楽しみですね。
はい、ぜひ実現したいですね。それと、すみません。最後にひとつ、これだけはどうしてもきちんと伝えたくて。動物を飼いたいと思ったとき、ペットショップに行く人が多いと思うんですけど、飼い主を募集してるコたちってたくさんいるので、里親になることで飼殺処分を減らせます。ペットショップを否定するわけではないんですが、ペットショップ以外にも保護センターや里親募集のサイトなど、選択肢がたくさんあるので、それを知っていただけたら嬉しいです」

“好き”だけではない、獣医としてのプロフェッショナル魂

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HOLICS編集部

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