好きを仕事につなげたひと 

二つの“好き”に導かれ、殺処分0を目指す獣医平野さんの日常

SPECIAL 2017.7.24

「好き!」の熱量には説得力があり、「好き!」の裏側には、その人なりのストーリーがあります。そんなHOLICSのコンセプトを体現する人々をインタビューしていくシリーズ“好きを仕事につなげたひと”。今回は、小田原から電車で10分ほどの場所にあるSwing動物病院の院長・平野亜矢子さん(35歳)。「幼い頃から動物も“好き”だったけれど、父の影響で“お医者さん”にも興味があったんです」そう語る平野さんの、二つの“好き”が獣医という仕事になるまでを伺いました。

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“考え事”が大好き。だから自分は、動物福祉の世界に向いていた

小田原は、平野亜矢子さんが生まれ育った街。現在は上野動物園の獣医を務めるご主人と息子さんの3人暮らし。都会とは少し違う、ゆったりとした空気が流れる閑静な場所に『Swingどうぶつ病院』はありました。取材当日、病院に到着すると、ひとりの女性がゲージに入れた猫を抱えて、車で帰路に着くところ。「あの方、伊東からいらしたんです。最近は口コミで、遠くから来る方も増えていますね」。取材で訪れたのは、平日の14時頃。その日平野さんは20頭の犬&猫の手術がこれから控えていて、16時になると手術を終えたコたちのお迎えラッシュでまた忙しくなるーー。それでも、平野さんの表情に切迫したものはなく、どこか優しい雰囲気が漂っています。「動物の殺処分問題は暗く辛いものが多いけれど、動物福祉の活動が楽しく自然に、まるで体が動いてしまうように広がっていったらいい」。そんな想いを込めて、病院名はJAZZの名曲『Swingしなけりゃ意味がない』からとったとのこと。「手術ご覧になりますか?」平野さんの一言から、取材は始まりました。

インタビューを読む前に:知っておきたいワンニャン事情

Q のら犬、のら猫ってどのくらいいるの?
A 平成27年度、環境省調べによると、保健所へ引き取られた犬の数は40187匹、猫は76014匹。猫は、そのうち約7割以上が子猫です。のら犬の数は年々減少している一方で、猫は家猫の放し飼いや繁殖スピードの早さから、なかなか減らないのが現状です。

Q のら犬やのら猫には、エサをあげていいですよね?
A まず犬に関してですが、犬は人獣共通感染症の狂犬病というものがあるため、狂犬病予防法という法律で野良犬の状態でいることはできず、発見次第行政が捕獲することになっています。この間神奈川県の動物保護センターで聞いた話によると毎日行政の車が巡回していて、迷い犬も含め少なくとも1日1頭は収容されているようです。(普段、野良犬を見かけることがないので神奈川で毎日1頭という数に驚きました)
また、猫に関してですが、猫を好きな人も嫌いな人も関心がない人もいる世の中で、猫も社会の一員としてルール作りをしたものが地域猫活動というものです。地域ごとに地域にあったスタイルを確立するのがよいですが、基本ルールとして、エサをあげることは人の優しさなのでOK、ただそれに伴う掃除や避妊去勢手術という責任も果たしましょうというものです。(えさやり禁止をすると隠れてエサをあげるようになり、状況が悪化してしまう事例が多いです)

Q 去勢+避妊って、人間のエゴじゃないの?
A 不妊手術をすることで、行政によって殺処分される命を未然になくすことができます。人間のエゴではなく、犬や猫が共生するために避妊手術は必要です。

開院して約1年。手術の数の増え方は想定外だった

——手術拝見しても大丈夫なんですか?
はい、大丈夫ですよ。男のコはすぐに終わるので。

取材当日も、手術をたくさん抱えていた平野亜矢子さん
このときは10分ほどで手術終了

——(手術台の上の猫を見て)このコはもう爆睡してるんですね。
はい、爆睡ですね(笑)
(10分ほどで手術終了)

——今日は20頭の手術があるとのことですが、1日平均どのくらいなんですか?
うーん、20はちょっと多いほうかな。曜日によるんですけど、だいたい10頭くらいですかね。

——1泊もできるんですよね?
そうですね。私の都合で1泊させたいときもあったりするので、別料金はいただいてないです。

——こういう病院は、東京だとやりづらい部分もあるんですか?
いや、東京でも中野に『moco動物病院』という病院があって。そこの先生は、ワンちゃん猫ちゃんの殺処分ゼロを目指す先生たちで作った団体の会長を務めてらっしゃるんです。以前一緒にお仕事させていただいたこともあって、ここ(Swing動物病院)を開業する前にその先生にお話を聞いて、「やろう!」と決断しました。ウチと同じように、保護犬猫のための病院が他にもあることは、実はあまり知られてないです。

——先ほどの女性は伊東からいらしたとのことでしたが、伊東にはまだこういう病院はないんですか?
静岡(浜松)にもどうぶつ基金の協力病院が増えました。伊東や熱海の方は小田原のほうが近いので利用してくれています。専門病院は少ないですが、全国的に野良猫の不妊手術に協力的な病院は増えています。子供や孫の世代に犬猫を殺処分していた時代があったことが信じられない世の中にしていきたいと思っています。

——他のお医者さんの方は年齢層はどのくらいですか?
同世代と、同世代より若い獣医さんが多いです。30代以下の若い獣医さんが興味を持っていることが多い気がします。

——小田原で開業しようと思ったのは、何か理由があったんですか?
小田原を選んだのは神奈川県西部に保護犬猫の診療を行う病院がなかったことと、生まれ育った土地だからということで、開業を選んだのは勤務するより自分のやりたいことに対して柔軟に動けると思ったからです。

入ってすぐの病院内の様子

受付前の壁には、和光高校時代の友人の作品が飾られていた。この日は「忙しくて忘れてました」とのことだったが、ふだんは、大好きなJack Johnsonの音楽を1日かけているそう。

——でも、手術から電話対応まで、おひとりでやられているとは思いませんでした。
はい、事務的なこともすべてそうですね。

ーー1年経った今の状況は、想像通りですか?
そうですね、想像通りといえば想像通りかな。逆に想定外だったのは、手術の数が増えるペースが早いこと。月100頭は1年くらいでいくかなと思っていたんですけど、始めて半年経たないくらいで、もう月で約100頭手術するようになっていたので、思ったよりは広まるのが早かったんだと思います。

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HOLICS編集部

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