好きを仕事につなげたひと

ジャーナリスト安田菜津紀さんの「置き去りにしない」仕事術

SPECIAL 2018.12.14

フォトジャーナリストとして東南アジアや中東、アフリカ、日本国内の難民を取材。また東日本大震災以降、被災地を記録し続けてもいる安田菜津紀さん。31歳にして確固たるメッセージを持ち、厳しい環境にも臆さず踏み込んでいっています。そんな安田さんの、仕事をするうえで大切にしていること、心の切り替え法など様々に伺いました。

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日常に変化をつけるだけで、その先は広がっていく

女性フォトジャーナリストとして勢力的に活動している安田菜津紀さん。海外、国内の貧困や災害の現状をカメラに収め、雑誌やテレビ、ウェブなどで発信し続けています。そもそもフォトジャーナリストってどんな仕事? そして安田さんご自身はなぜその仕事を選択し、遠く離れた紛争地まで足を運び続けるのでしょうか。

写真の持つ力に気づいた高校時代

出典: 『写真で伝える仕事 世界の子どもたちと向き合って』(安田菜津紀著・日本写真企画)©国境なき子どもたち

ともに時間を過ごした同世代の仲間たちと。

ーーフォトジャーナリストという仕事に就いたきっかけは何だったのでしょう?

きっかけは、高校2年生のときに「国境なき子供たち」というNGOからカンボジアに派遣してもらったことです。でも実は、海外に興味があったり人助けをしたいという思いを持っていたわけではなくて、すごく自分本位な気持ちで参加しました。私は中学生のときに父と兄を亡くしていて。自分の隣にいたはずの人が居なくなって、家族って何なんだろうとか、そもそも人と人の繋がりって何なんだろうとか、答えのない疑問がぐるぐると巡っていたんですね。それで、全く違う環境で生きている同世代の子たちはどういうふうに家族のことを考えて、人とどう繋がり合って生きているんだろう、と考えて。その全く違う価値観に触れれば、自分がモヤッと持っていたものに何か答えをもらえるんじゃないかと考えたんです。

ーーそこで様々な価値観に触れて衝撃を受けた、と。

それまで何となく大変な遠くの国、という感じだったのが、一気に“あなたと私の抱えている問題”となったんです。「じゃあいろいろな経験と言葉を分けてくれた友達に何が返せるだろう?」と考えたときに、私には彼らに毎日お腹いっぱいになってもらうだけのお金もない。唯一あるとすれば、五感で感じてきたカンボジアを一人でも多くの人たちに伝えて共有していくことだ、と思って。それであらゆる新聞社や雑誌社に電話をかけて、「記事を書かせてください」とお願いしたんです。

ーーえっ! ものすごいアグレッシブですね!

昔から図々しかったんです(笑)。もちろんほとんどのところからは門前払いされたんですけど、雑誌で2誌だけ対応してくださったところがあって、カンボジアで見聞きしてきたことを掲載させてもらえたんです。

ーーそこから写真という伝え方にたどり着いたのは、どういう経緯だったんですか?

教室で「夏休みにカンボジアに行ってきたんだ」と友達に写真を見せていたら、「何それ、どこの写真?」って、話したこともないようなクラスメイトまで寄ってきて「おっ!」と思ったんです。いきなり文章で「読んで」と言うとハードルが高いかもしれないけど、写真なら「そこに写っているものは何なの?」という感じで、知りたいという最初の扉を開いてくれるかもしれない。最初の0を1にする力があるかもしれないと、何となく写真の力に気づき始めたのが高校生のときだったんです。

武器は母親譲りの図々しさ(笑)

ーーそこからフォトジャーナリストという仕事に興味を持たれるようになったわけですね?

大学生のときに、フォトジャーナリストという写真で伝えることを仕事にしている人に出会ったんです。なるほどそういう職業があるのか、と、大学2年の時にカメラを持ち始めて。そこからカメラとともに現地に行って見たことを伝えていこう、という方向に切り替えたんです。で、やはり図々しかったので、帰ってきたら新聞社や雑誌社に写真を持ち込んで(笑)。

ーーある意味、その積極性が、やりたいことを実現させていった秘訣ですね。

これは母親譲りなんです。母は毎日、「あー、こんなに美しくなったら世の中の女性に悪い」と言いながら化粧をして出かけていくという、良く悪くも図々しさの模範みたいな人だったんですよね(笑)。

ーーでもやりたいことを仕事にしていくには、タフでないと難しいところがありますよね。

ええ、図々しくても、いろいろな編集部に行くと多くの編集者さんがアドバイスをくれるんです。叱咤激励してくださる方もいれば、「君の写真はこういうところが良くないけど、こういう組み方ができれば次は載せられるかもしれないから頑張っておいで」と具体的に改善点を教えてくれる方もいて。そうやってたくさんアドバイスしてもらえたのは財産ですね。

ーーそうなんですね、ダメ出しされるとつい挫けてしまいそうですが……。

もちろんすべてのアドバイスを鵜呑みにしたわけではありません。ただ、「自分の実践していきたい表現て何だろう?」と考えたときに、参考にさせていただくアドバイスの選択肢が多かったということは、非常にありがたかったですね。

取材は“いただきもの”だから……

出典: 『写真で伝える仕事 世界の子どもたちと向き合って』(安田菜津紀著・日本写真企画)
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HOLICS編集部

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