好きを仕事につなげたひと

ココナッツオイルで年商7億!荻野みどりさんの体当たり仕事論

SPECIAL HOLICS編集部 2018.6.29

オーガニック食品ブランド「ブラウンシュガーファースト」を立ち上げ、5年間で年商7億円の企業に育て上げた起業家・荻野みどり(おぎの・みどり)さん。自身の子育てから「人は食べたものでできている」ということを体験し、「子どもに食べさせるものの選択肢を増やしたい」という思いで会社を設立。何事もスパッと一刀両断で取捨選択をする彼女の“自分らしい”キャリアを築くまでの道のりと、これからの生き方とは?

石橋は叩かないで渡ってしまう。前に進もうと思った瞬間に最初の一歩がすでに出ていますから(笑)

仕事中に欠かせないアイテム。左・「コーヒーに溶かして飲むと頭がすっきり!」ココナッツオイル¥900、右・「リフレッシュしたいときにシュッとひと吹き。さっぱりとした草木の香りを嗅いで深呼吸すると落ち着きます」ネロリラ ボタニカのミスト。

ーーココナッツオイルと出合ったったきっかけは?

ある日、「たくさん食べると決してヘルシーではないな」と、バター自体に疑問を感じ始めたんです。子どもが心置きなく食べられる、バターに代わる材料はないかと探してたどり着いたのがココナッツオイル。当時、アメリカではすでにヘルスコンシャスな人たちが愛用していて、さらにトランス脂肪酸フリーという点にも惹かれました。

ーーその頃、日本ではまだココナッツオイルは出まわっていなかったですよね。

はい。情報はほとんどなく、商品自体も出まわっていなかったので、あらゆるココナッツオイルをアメリカから輸入し、食べ比べました。その後、バターの分量すべてをそのココナッツオイルに置き換えてクッキーを焼いたら、とても美味しくて! だから健康食品としてではなく、デイリーユースな調理油としてスーパーの棚に並べる! とこのときから決めていました。

ーー海外のココナッツオイルを輸入販売することから始めたということ?

はい。お気に入りのメーカーから輸入していたら、個人が購入する量を超え始めて、通関しにくくなってしまったんです。そこで、きちんと事業の体裁を整えようと、ココナッツオイルを販売するためだけでなく、クッキーの原料としても輸入することにし、ココナッツオイルを使ったクッキーを置いてもらえるところを探すことにしました。それで、とあるコンビニエンスストアに取り扱ってもえらえないか電話をしたんです。

ーー自ら商談を持ちかけたんですか。

そうなんです。会社の代表番号に電話をかけたら、運よくバイヤーの方につないでくださって、商談を組んでいただけることになったんです。そしたらすぐに気に入っていただけたんです。本来クッキーに使われる白砂糖とバターのかわりに、きび砂糖やココナッツオイルを材料にし、"お母さんの優しさ”で作るというポリシーにすごく共感してくださって、本当に奇跡でしたね。

ーーそこからどんどん事業が拡大していったんですね。

2011年11月に株式会社にし、オイルを販売することを決めて、「FOODEX(フーデックス)」という食品専門展示会に出展したんです。そこで、スーパーや百貨店など大手取引先が一気に決まりました。

ーー売り上げが上がって、従業員が増えて.......会社の規模が大きくなっていくことを、どんな風に受け止めていましたか?

ファーマーズマーケットに出店している頃から、いずれ会社が大きくなるであろうことは想像していました。ただ、売り上げが上がるにつれて従業員も増え、去年の年末に社員15人、アルバイト30人くらいの規模まで成長したんですが、私がやりたいことと違う方向に進んでいる気がしたんですね。

そこで、各部門を独立させる業務委託形式に切り替えて、今いる人材を競合他社とシェアする方法を思いつきました。そうすれば彼女たちもさまざまな商材を武器にPRできて効率がいいですし、何よりも業界を盛り上げるきっかけになると考えました。

ーー新しいスタイルですね!

よく、競合他社、同業者から販路を拡大する方法について聞かれるんですが、例えばうちのPR担当の能力を他社に使えば、その会社にもアイディアが広がって、私もその会社と新たな取引ができるかもしれない。私としてはナチュラルオーガニックの領域が伸びたら伸びただけ嬉しいですし、一人勝ちをする気なんて1ミリもありませんから。

ーーナチュラルオーガニックの業界は、日本ではまだまだなのでしょうか?

はい。海外だと急成長している業界で、マーケットが広がると価格が下がるといういい循環がアメリカや中国、台湾では訪れているのですが、日本では高いままですしね。実はそれを受けて、当社も在庫を持たない商売に切り替えようと思っているんです。

ーー「在庫を持たない」とは、どのような方法ですか?

「ブランドプロダクションスキーム」といって、「ブラウンシュガーファースト」の商品を製造者と企画し、PRから営業のアシストをする。そして販売した売上を報告してもらい、それに対してのブランド使用料をいただく方法です。ブランドとしての考え方や理念、見え方は私たち「ブラウンシュガーファースト」が責任をもって管理します。モノやお金のやりとりを一任できるので、手間も無駄も最低限に抑えることができますし、物流もシンプルになって環境にも優しい。さらに、販売期間が伸びるので食料廃棄のリスクも減ります。実現したいのは、お母さん目線で生活や心が豊かになる食品の開発や、それを売るマーケットを広げることなので。

「書類の管理やメモ書きもすべてiPad。イヤホンはAirPods。AirPodsを指で叩くとSiriが起動するので、それでメールを送ります」

ーー仕事をするうえで、大切にしているものは?

向上心を持ち続けること。新しいことにたくさんトライして、経験値と知識を高めていくのが好きで「これだ!」と思ったら徹底的に調べて、答えを見つけ出します。だから、石橋は叩かないで渡ってしまう。前に進もうと思った瞬間に最初の一歩がすでに出ていますから(笑)。

「石の上にも3年」とか修行や忍耐という言葉は好きじゃありません。いかに近道するかが大事だと思いますし、やってみて違うと思ったらすぐ辞めて方向転換すればいいと思っています。

ーー近い目標や、将来の夢はありますか?

「BROWN SUGAR 1ST.(ブラウンシュガーファースト)」を、"心を豊かにするお母さんたちの食品ブランド”として、世の中に浸透させることです。近い未来、日本の食卓の形は大きく変わっていくと思っています。もしかしたらロボットがご飯を作って、お母さんが料理をしない世の中がやってくるかもしれません。万が一そうなった未来に、作るのは機械で無機質であっても、心豊かな食という価値観を残すことが、食を仕事にする私の使命だと思います。そのためには、オーガニックの会社として、お母さん目線の会社として、どのようなサービスを提供すればいいのかに、今いちばん関心があります。

ーーすごい世界になりそうですね!

はい。その第一弾として、オーガニックナチュラルという領域を再定義してメジャーにすること。そうすれば、生産者さんが潤って農地が広がっていくと思います。その次の段階として「Ready to eat=すぐ食べられる」という領域に、先んじて取り組みたいと考えています。最終段階としては、すぐに食べられるんだけど、お母さんが少しだけ手間をかける余白をあえて残した、「Ready to eat」の新領域を作りたいですね。

荻野みどり(おぎの・みどり) (株)ブラウンシュガーファースト代表取締役社長

福岡県出身。アパレルバイヤーを目指し短大の被服科へ進学。地元(福岡)のアパレルショップでバイヤー経験を積み上京。その後は数々の仕事をしながら、放送大学、駒澤大学、慶応義塾大学へ入学し社会人大学生として学業に取り組む。妊娠8ヵ月のときに起こった東日本大震災をきっかけに、「わが子に食べさせたいかどうか?」を基準に食材を厳選する手作りの菓子店としてBROWN SUGAR 1ST.を創業。現在は、オーガニック食品ブランドとして、全国3000店舗ほどの小売店に食品を卸している。

BRAWN SUGAR 1ST.のHPはこちら

「知りたいこと」に貪欲でいて、いつだって迷いのない決断力で進むべき道を選ぶ。その潔い荻野さんの生き方に終始驚きっぱなしのインタビューでした。中でも印象的だったのは、やっぱり「スーツケース1個分生活」と「月10万円生活」。「足りない、足りないは不幸。それならココで充分という最低限を見つけたほうが幸せなんじゃないか」という荻野さんの言葉にハッとしました。執着を手放した柔軟な生き方は人を強くするんだと。

撮影/内田大介

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