写真家・花盛友里が会ってみた。

ギャル誌出身・鎌田安里紗さんが向き合うエシカルファッションとは

SPECIAL 2018.10.5

今、20代の女の子が面白いーー。固定観念にとらわれることなく、とても柔軟に「好き」を仕事にする彼女たちの素顔に迫る人気連載。撮影兼インタビュアーを務めるのは、人気写真家・花盛友里さん。4回目となる今回ご登場いただくのは、現役大学院生モデルでありながら、非常勤講師をこなし、エシカル・ファッションの情報を発信するなど、さまざまな活動を行なっている鎌田安里紗さん。ひとつの肩書きにとらわれない彼女の姿を、花盛さんのポートレートとともにお届けします。

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「決してネガティブキャンペーンをしたいわけじゃない。目につきにくい選択肢も知って欲しいんです」

鎌田安里紗(かまだ・ありさ)さんが単身で上京したのは高校生の頃。どうしても働きたかったという「渋谷109」へ履歴書を持ってショップを渡り歩いたり、そうかと思えばギャル系ファッション誌「Ranzuki」でモデルをしたり。日サロで焼いた肌に金髪といったルックスだったけれど、進学した先は慶應義塾大学。現在は大学院生としてパターンランゲージを研究する傍ら、エシカル・ファッションの情報を発信している。

そんな彼女の話を聞いて、行動することの大切さを知ったと、花盛さんも感動した今回のインタビュー。そもそもなぜエシカル・ファッションというジャンルに興味を持ったのか? 生い立ちや現在の活動とともにお話を伺いました。

花盛 エシカル・ファッションてどういう意味なの? 私も記事を読んだりして、なんとなくの意味をわかっているつもりではいるんだけど。

鎌田 直訳すると「倫理的なファッション」という意味なんですが、一般的には、自然環境や生産者に配慮をして作られたお洋服のことです。私はもう少し意味を広げて、誇りを持って語れるような背景を持つ服のことだと捉えています。

安くてかわいい服もたくさんありますが、私はどこでどんな風に作られた服なのか、ということにすごく興味があります。

エシカルファッションで具体的に紹介されることが多いのは、オーガニックのコットンやユーカリなどからできている環境負荷が低い素材を使った服。あとは、フェアトレードの服などですね。

花盛 フェアトレードって、よくコーヒーやチョコレートの生産で問題になっているもの?

鎌田 そうです。商品を作ってくれている人たちが、1日3回の食事をし、子どものいる家庭は学校に通わせられるくらいの給料を支払おうというもの。当たり前のことなんですが、すごく買い叩かれているのが現状なんですよね。

高校2年生くらいのときに、フェアトレードに興味が出て、当時モデルもやっていたし、アパレル店員もしていたので、洋服のフェアトレードについて調べてみたんです。そしたら、ファッション業界でも労働環境がひどいことになっているという記事がたくさん出てきて。その数年後に、バングラディシュの縫製工場が倒壊して、大勢が亡くなってしまった事故があり、見て見ぬふりはできなくなりました。

花盛 普通の生活をしていたら、高校2年でなかなか行きあたらない問題だよね。フェアトレードを最初に知ったのは授業か何か?

鎌田 きっかけは14歳の頃に行ったインドネシアだと思います。海外からのお客さんで賑わう観光地に行ったら物乞いをする子どもがいて、高級ホテルの前の道路では寝ている人がいる。そのコントラストが印象的で、なんとなくずっと心に残っていました。

あと、通っていた高校のクラスは1/3が帰国子女か外国人で、アメリカや韓国、エジプトなどさまざまな国の生徒がいたので、ごく自然に日本以外の国のことを考えられる環境ではありました。

環境や貧困といった社会問題は授業でも扱うんですが、インドネシアで見たいろんな光景と繋がって、教科書の中の話ではなく、切実な問題として興味を持っていました。そこからボランティアに参加したり、色んな活動をする中で、フェアトレードの考え方を知り、自分のフィールドであるファッションと繋げて考えていった、という感じですね。

花盛 へえ! やっぱり安里紗ちゃんて真面目だよね。見た目はギャルっぽいけど(笑)。

鎌田 昔から勉強は好きだったと思います。ただ、ファッションとしてギャルっぽいものが好きだったんですよ。中学生の頃から日サロに行って、髪を染めてピアスにメイク、でも勉強もしたい、みたいな。(笑)だから、中学3年生の頃にすごく困りました。地元・徳島県の高校は偏差値が上がると校則も厳しくなるという傾向にあったので、行きたいところが全然なくて。

そこから、金髪にできるくらい校則がゆるくて、真面目に勉強ができる高校をネットで探しました。場所はどこでもよかったので、北海道から沖縄までいろいろと。でも校則がゆるいかどうかなんて学校のホームページには書いていないので、茶髪の生徒が写っている写真を片っ端から探して、それをリスト化してました。(笑)

花盛 マルキュー(渋谷109)でアルバイトをしていたのって、高校生の頃だっけ?

鎌田 はい。マルキューのほぼ全ブランドに履歴書を送ったのですが、18歳以上じゃないとだめなところばかりで…。最後は店の張り紙見て年齢制限がないところに、「雇ってもらえませんか?」と直談判しながら歩いて回りました(笑)。 

花盛 学校といいアルバイトといい、やっぱり行動力って大事だよね。

鎌田 大事です。動かないと何も起きないし、難しそうなことも続けていけばどうにかなると思っています。

花盛 今はエシカル・ファッションにおいて、具体的にどんな活動をしているの?

鎌田 エシカル・ファッションプランナーという肩書きで、講演や商品企画などを行なっています。具体的には、日本各地の商業施設や大学、自治体のイベントに登壇したり、テレビやラジオでエシカル・ファッションについて話す、思いのあるものづくりをしているブランドと一緒に服の企画をするといった感じです。

そのほかには、ここ数年、洋服の生産現場を実際に訪ねてまわるツアーを旅行会社と協働で開催しています。これまでに、カンボジア・インド・スリランカ・ベトナム・ニュージーランド・岡山などで開催しました。やっぱりただ話を聞くよりも、実際に体験したり、見たほうが状況がわかると思うんです。 

例えば、カンボジアの縫製工場で働く女の人にインタビューしてみたり、一緒にコットンを摘むところから機織りするところまでをやってみたり。そんな体験をすると「洋服は植物からできていて、彼女たちが作っているんだ」って実感を持って分かるじゃないですか。そうすると、例えば「なぜそれらを500円で販売することができるんだろう?」といった疑問が湧いてきますよね。

洋服を作る素材ひとつにしても、ポリエステルの場合は土に還るのに200年くらいかかると言われていて、天然素材に比べるとかなり時間がかかります。 でも、素材によって出せるシルエットに違いがあるので、環境への影響だけでは選び難い。そうしたことを知って、自分で買う服を選ぶときの参考にしてもらえるようにしたいと思っています。

花盛 そのスタディーツアー、子供がもう少し大きくなったら行かせたい! どうやって始めたの?

鎌田 仕事をする中で、素敵な哲学を持って服を作る人たちに出会ったのですが、彼らの魅力をもっとたくさんの人にダイレクトに知ってもらいたいと思って。「講演で話すだけでは伝わりきらなくてもったいない!」と、会いに行ける機会をつくりたいと思いました。

見えづらい社会課題も、本で読むより会って話を聞く方がよっぽどわかることがあります。とにかく現場に行けるようにと、いろんなところで話していたら旅行会社さんと繋いでもらうことができました。

花盛 やっぱり行動力がすごい。やりたいことがあったら、とりあえず口に出すことが重要だよね。どこかで誰かに引っかかることがあるかもしれない。

鎌田 そうなんですよね。口に出すことで怒られることもありますが、それでも言ってみる方がいいですよね。私自身、エシカルな生産や消費がいいと言いながらも、全身フェアトレードの服を身につけているわけじゃないし、お肉も食べるし、プラスティックも使うので、いろんな思想の人から見るとツッコミどころ満載です。でも、こういう方向に向かっていきたいな、こういうのが心地いいなという意思表示にも意味はあると思うので。生身の人間なので矛盾だらけですが、自分自身も考え続けながら発信していきたいと思っています。とはいえ、批判されると悲しいですが(笑)

花盛 そういうときは、どうやって乗り越えるの?

鎌田 近くにいる人や、会ったことのある人に心ないことを言われることはありません。たいていはSNS上のコメントなので、この人も会って話をしたら、こんなに冷たい言い方はしないだろう、と考えて落ち込まないことにしています。

私はファッションが好きだし、安くて可愛い服に対するネガティブキャンペーンをしたいわけではないんです。単純に、もっといいやり方がないかなぁと考えながら、他の人にも問いかけているような感じです。

花盛 何かをやる上で強い心ってすごく大事。最近会った人の中で、面白いなと感じる人はいた?

鎌田 ずっと尊敬しているのは、サフィア・ミニーさんという方。25年ほど前に「ピープル・ツリー」というフェアトレードのブランドを立ち上げて、日本やヨーロッパで展開しています。最近出した「SLAVE TO FASHION」という本は、タイトルを直訳すると「ファッションの奴隷」という意味なんですが、さっき話したような下請けのさらに下請けの会社で働く人たちが、奴隷的に働かされている状況を、現地を訪ねてインタビューをしてまわってまとめたもの。それを元に改善に向けて色んな組織に働きかけています。

実際に、世の中を動かせる彼女のパワーを本当に尊敬していますし、会うとめちゃくちゃ元気でチャーミングなところも魅力的です。厳しい現実を知ってネガティブになったりしますが、それをポジティブに発信するというスタンスは、彼女から学びました。

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HOLICS編集部

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