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スペシャルインタビュー

黒木華さんの「自分にないものに憧れてしまう」偏愛ヒストリー

SPECIAL 2017.8.21

舞台、映画、ドラマの名だたる作品で活躍し、どんな役も変幻自在に演じ、観た人の記憶に残り続ける女優・黒木華さん。プライベートでは、読書からお笑いまで、気になるものがあったらジャンルを問わず飛び込んでいく、熱くて行動的な一面も! HOLICSだけに話してくれた偏愛ヒストリーをお届けします。

何度も読み返す本は、“偏愛”を体現しているあの本

――本がお好きで、よく読んでいるというお話をお聞きしました。

黒木 はい、カバンにいつも本を1冊は入れています。本の続きが気になって、電車に乗るとすぐに読み始めるんです。読むスピードは結構速いです。読み終わりそうになったら、本屋さんにいって“ジャケット買い”のように帯の文章を読んで買ったり、図書館で借りてきたり。友達や仕事仲間に「なにかおもしろい本ないですか?」と聞いて買うこともあります。ただ、買った本を全部家に置いておくと増えてしまうので、「これからもずっと好きでいるだろうな」というものしか残さないようにしているんです。うちにある本は、じぶんの“好き”が凝縮していて、かなり偏っているかも……本棚って、少し恥ずかしくて人に見せられないですよね(笑)。

――その中の本には、どんなものがありますか?

黒木 たとえば『窓際のトットちゃん』が大好き。何度も読んでいるのですが、学生時代に初めて読んだときは、作者が黒柳徹子さんだとは知らずに、素敵な物語だと思って読んでいたんです。「こんな学校があったらいいのにな」「個性的な方だな」って。それで、「え? 物語じゃなくて、実話だったの?」と驚きました(笑)。作者が黒柳徹子さんで、実話だということがわかってからまた読んでみると、感じ方が変わりますね。

窓際のトットちゃん

黒柳徹子著/講談社文庫 ¥821

――同じ本でも、何度か読むと、また感想が変わることもありますよね。

黒木 そうなんです! 「あのときはおもしろいと思って読んでいたけど、今は全然おもしろくないな」とか、「読み返してみたら、もっとおもしろい!」とか。自分の成長や体調などで、見る部分が変わっているのかもしれない。知っている本だけれど、時期によって新しく感じることがあるのも、本の魅力だと思います。

あとは、村上龍さんの『コインロッカーベイビーズ』も何度も読んでいます。何かを破壊していく雰囲気が大好き。破壊することって自分にはできないことだから、じぶんとは違う人が出ているってことに惹かれるんですよね。私はわりとマジメで破壊的なことはできないから、そういう人に憧れるのかもしれません。お芝居でもそうですけれど、自分にはとてもできないような、難しいことを軽々と超えていく人たちに憧れてしまいます。

コインロッカーベイビーズ

村上龍著/講談社文庫 ¥961

――愛してやまない本のなかで、No1.は?

黒木 No1は、嶽本野ばらさんの『ミシン』という本です。もう何度も読み返しています。野ばらさんのことは私が高校生のころからずっと大好きで、サイン会&握手会に行ったことがある唯一の作家さんなんです。野ばらさんの書かれる本は、洋服に対する愛情が深いんですよね。ロリータ系とかパンク系とか。メジャーなファッションではないかもしれませんが、その描写がものすごく魅力的で。文章から想像してみたり、実際に『ベイビーザスターズシャインブライト』という洋服のお店に見にいって「こんな感じなんだ!」と思ったりしたことも。自分では着ないのですが、眺めるだけでもおもしろいです。いろいろな意味で不自由な人がたくさん出てきて、その不自由さがすごくいとおしくて。まさに、偏った愛がある本……“偏愛”な本だと思います。おすすめです。

ミシン

嶽本野ばら著/小学館文庫 ¥483

元気がないときも、元気があるときも“お笑い”がそばにある

――黒木さんは、大阪出身なんですよね。

黒木 はい、大阪に昔からの友達がたくさんいて、帰るとよく会っています。私は小さな子どもが大好き。ママになっている友達もいて、子どもを連れてきてくれるんですが、3歳くらいの子とか、本当にかわいい。一緒に遊んでいますよ。あとは、根が関西人だから、お笑いも大好き。「アメトーーク!」なんかもよく見ています。

――そうなんですか!

黒木 お笑いはかなり好きです。一番好きなのはバナナマンさん。私が大学生のときに、友達が「これ面白いよ」と貸してくれたのが、『bananaman live 疾風の乱痴気』というコントのDVDだったんです。それを見て大好きになって、ラジオ番組や過去の2人のトーク番組「バナナファイヤー」を見たりしてさらに好きになりました。あとは、バナナマンさんが海外に行って、“日村さんを世界のエンターテイナーにする”っていう企画(インターネット番組「バナナTV」)もおもしろかったです。

DVD『bananaman live 疾風の乱痴気』

――直接お会いになったことはありますか?

黒木 あります。番組に出させていただいたり、ライブにも行かせていただいたりしています。バナナマンさんが私の中ではお笑いの中でトップというのはずっと変わらないと思いますが、他におもしろい方を見つけると追いかけています。高校生時代は、ラーメンズさんがすごく好きで。ライブが大人気でチケットの取り方すらもわからなくてDVDを見たりしていました。お笑いは、コントも漫才も大好きです。お笑いって、元気がないときに見ると、いつのまにか元気になれるところもいいですよね。

黒木さんが好きな「ラーメンズ」のDVD

――ヘコんでいるときに見たりするんですか?

黒木 そうですね。ヘコんでいるときはなるべくそのことを考えないように、誰かとごはんを食べにいったり、バナナマンさんのDVDを見たり、テンションが上がるようなことをしています。自分がヘコんだままにならないように、気持ちのアップダウンがないようにと意識しているんです。お笑いはそんなときにもぴったり。まあ、元気があるときにもお笑いはいつも見ているんですけど(笑)。

舞台はチラシを見ながら「おもしろそうなもの」を探します

――休日はどんなふうにして過ごしていますか?

黒木 今でも時間があれば舞台を観にいってますね。高校時代に演劇部で、そのころから舞台をよく観にいっていたんです。初めて観たのは、松たか子さん主演で野田秀樹さん演出の『贋作・罪と罰』です。演劇部の先生が「観に行こう」とみんなを誘ってくださって。大阪に住んでいましたが、新幹線で東京まで日帰りで舞台を観にいったこともあります。今は共演した方や友達が出ていたりすると観にいくこともありますし、あとは舞台にいくとチラシをたくさんいただくので、その中から探したりもします。

NODA・MAP第11回公演「贋作・罪と罰」

――チラシからも探すんですね!

黒木 はい、ふつうに探していますよ(笑)。チラシをぱらぱら見ながら、「おもしろそうなのがないかな~」って。そして劇場でも普通にお客さんとして、純粋にその作品に没頭しています。

――8月27日(日)から、ロシアの劇作家・チェーホフ原作、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出、シス・カンパニー公演の舞台『ワーニャ伯父さん』に出演されます。

黒木 はい、現在は稽古中なのですが、人間の細かい心の機微が見られる舞台だと思います。最初に本を読んだときは、暗くて、鬱々としていて、不平不満ばっかり言っているイメージだったのですが、ケラさんの演出で悲しさがおもしろさになったりと、コミカルな場面もたくさんあります。ケラさんはミュージシャンでもいらっしゃるので、伏見蛍さんがギターの生演奏をされたりと、私が今まで出させていただいた舞台とは大きく違った印象です。「“チェーホフ”って、なんか難しそうだな」と苦手意識を持っている方でも、おもしろく観ていただける舞台だと思います。

――教授と先妻との娘“ソーニャ”という役を演じられます。

黒木 出てくる人の中では、一番しっかりしていて、ときに他の人たちよりも大人に見えるかもしれません。一方で恋などをしたことがないタイプで、そういうことに関しては子どもっぽくなったり。すごくわかりやすいので、感情移入しやすいキャラクターなのではと思います。

――出演される側、そして観る側からも舞台を愛する黒木さんにとって、舞台の魅力とはズバリ何でしょうか。

黒木 劇場で“生で”見られるということが、すごく大きいと思います。最近はライブビューイングもありますが、舞台はのちにDVDになることがあまりないので、その場で、そのときにいた人にしかできない経験になると思います。舞台も映画もそうですが、自分で観たいものを選んで、お金を払って観にいくことに意味があるのかもしれません。舞台や映画はなくても生きていけるものだから、自分でも、心の余裕がないと観にいかないと思います。そこを一歩踏み出して観にいくことで、人生が変わることがあるかもしれない。その日、その場、その瞬間にしか出あえないものとして大切にしていきたいです。

KERA meets CHEKHOV Vol.3/4 『ワーニャ伯父さん』

ロシアを代表する劇作家・チェーホフ4大戯曲を上演するシリーズ企画。『かもめ』『三人姉妹』に続く第3弾『ワーニャ伯父さん』は、突破口のない閉塞感を抱え、諦めの境地に囚われた救いのない人たちが描かれた作品。絶望に耐えて生きていくワーニャ。そのワーニャを健気に支える姪・ソーニャを黒木華が演じる。【上演台本・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ【出演】段田安則、宮沢りえ、黒木華、山崎一、横田栄司、水野あや、遠山俊也、立石涼子、小野武彦。8月27日(日)から新国立劇場小劇場にて。【お問合せ】シス・カンパニー 03-5423-5906(平日11:00〜19:00)

黒木華(くろき・はる) 女優

1990年3月14日生まれ。大阪府出身。2010年NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。女優として映画、舞台、ドラマなど幅広く活躍。2014年『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)受賞。その後も『花子とアン』『重版出来!』など人気作品に多数出演。2018年には映画『散り椿』の公開が控える。

撮影/森本洋輔 ヘア&メイク 藤原羊ニ(EFFECTOR) 取材・文/西山美紀

HOLICS編集部

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