好きを仕事につなげたひと

現代アーティスト・小松美羽さん流“自分の役割”の見つけ方

SPECIAL HOLICS編集部 2018.5.25

今や世界を舞台に活躍する現代アーティスト・小松美羽さん(33歳)。その作品からみなぎる生命力は、一度見たら忘れられない“何か”を、私たちの心の奥深くに残します。眼に見えない大切なものを信じ、描き続け、アーティストとして“好き”を貫き通す小松美羽さんの生き方がここに。

その夢から覚めたとき、「画家になれる」と確信したんです。みんなに話したら呆れられましたが(笑)、それをずっと信じ続けてきたんですよね。

――それは神秘的な体験ですね……。その子どもの頃に見た夢を、どうしてそこまで強く信じることができたんでしょう?

うーん、どうしてだろう……。夢がすごく鮮明だったからかもしれないですね、今でも映像としてはっきり覚えていますし。そうして中学生くらいから少しずつ現実的にアートの道に進むことを考え始め、女子美術大学短期大学部に入学することになりました。

――そのときの専攻は何だったんですか?

洋画で入ったんですけど、実は入学後すぐに銅版画に専攻を変更したんです。

小さい頃、よく読んでいたヨーロッパの絵本があって、そこに描かれた絵の線が好きで忘れられなかったんですよね。でも、線を真似てボールペンなどで何度描いてみても、どうしても再現できなくて。それが、銅版画の授業でインクを刷った紙を銅版からペリペリペリッとはがしたときに、そこにその絵本の線があったんです。「私がやりたいのはこれだ!」と思いました。

魂という存在が、動物にも人間にも平等にあるんだな、って

出典: 小松美羽『世界のなかで自分の役割を見つけること』 ダイヤモンド社刊 画家への道が開けた銅版画『四十九日』

――大学の卒業制作では、本格的に画家への道を切り開くことになった銅版画作品、『四十九日』を描かれ、大学の優秀作品賞にも輝きました。

制作のきっかけは、祖父とペットのウサギの死です。どちらも息を引き取る瞬間に居合わせ、魂が抜け出ていく瞬間を目にしたんです。そのとき、「動物も人間も魂が宿った同じ“肉の塊”なんだ」と気づきました。つまり、魂という存在が、動物にも人間にも平等にあるんだな、って。

四十九日って魂が“あの世”へと旅する期間で、私たちにとっては故人の魂と向き合い、旅の無事を祈れるファイナルチャンスですよね。今を生きている私たちから、彼らにどんなエールを送るのか。私たちの思いを伝えるための、すごく重要な期間だと思ったので、『四十九日』を制作したんです。

――その作品のアイデアが生まれたときって、どんな感じだったのですか?

実は、祖父の葬儀の席だったんですよ。それなのに、絵の構図が自分の中でくっきりと形づくられたことで、笑顔になるのをこらえきれなくなってしまって。その場で下絵も描き始めちゃったんです。祖母から、「不謹慎よ!」って叱られました。申し訳ないと思いましたが、自分ではどうしようもないくらい、一刻も早く描きたくて仕方がなかった。

すぐに東京に帰り、それから夢中で制作に取り掛かりました。朝から晩まで連日取り組みましたが、それでも3ヵ月はかかりましたね。学校の批評会では酷評されたこともありましたが、銅版画の先生が、「小松さんにはオリジナリティがある」と反論してくださって。結果として、学校の外でも高く評価されることになりました。

――アーティストを目指すなかで、周りの就職などで心が揺れることはなかったですか?

気持ちとしては揺れませんでしたが、画家として食べていくための方法がわからなかったため、それなりの苦労はしました。当然、絵を描いているだけでは食べていけず、描くにも画材などを買うのにお金がかかるので、卒業後はアルバイトを始めたんです。アート関係の店で働いたときは、お客様や画廊の方に作品を見てもらったりもしたのですが、評価してくれる人が現れないどころか、「気持ち悪い」という感想がほとんどで……。

――それは精神的に苦しい日々だったでしょうね……。

そんなときは、大学時代に知った、茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』という詩を繰り返し読んでいました。「駄目なことの一切を/時代のせいにはするな/わずかに光る尊厳の放棄」。この詩のおかげで、かわいそうな自分に浸り続けたり、繊細な自分に酔いしれたりして終わらずに済んだんです。何かあるたびに、「そうだよね、がんばろう!」って。書き写して今もアトリエに貼ってある、宝物のような言葉です。

ただ、肝心のメタセコイアの人にはなかなか出会えなくて……。帰省するたび母から、「あのメタセコイアの人にはいつ会うの?」とか聞かれて。そこまでくると、もはやネタですよね(笑)。

私を停滞させていた作品の原盤に、ハサミを入れて切断した

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