写真家・花盛友里が会ってみた。

期待の新星。岩井俊二も認める映画監督・松本花奈さん20歳の素顔

SPECIAL 2018.7.25

今、20代の女の子が面白いーー。固定観念にとらわれることなく、とても柔軟に「好き」を仕事にする彼女たちの素顔に迫る新連載。撮影兼インタビュアーを務めるのは、人気写真家・花盛友里さん。第二回目となる今回登場するのは、大学生でありながら映画監督も務める松本花奈さん。稀有の才能を持ちながら、どことなくあどけなさの残る松本さんの素顔を、人気写真家・花盛さんが撮り下ろしたカットとともにお届けします。

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「昔から何の取り柄もないことがコンプレックスでした。だから、自分が死んだ後も残り続けるものが欲しかったんです」

若干20歳という若さで、人気アイドルグループのMVから映画、テレビドラマまで、多くの話題作品の監督を次から次へとこなす松本さん。もちろん仕事を共にする相手は自分より年上が圧倒的に多い中、監督というすべてをまとめる責任重大な立場として、日々奮闘していると言います。

中学生の頃に初めて触れたカメラに感動を覚え、映画作りを開始。そのわずか5年後には、岩井俊二監督も「将来の映画界が変わる。という意味でこの作品はすでに事件だ」と絶賛するほどの作品を作り上げました。

話していたら実は地元がとても近いことが判明した松本さんと花盛さん。話せば話すほどどんどん距離が縮まる中、松本さんは幼少期より続けていた役者から、現場をプロデュースするポジションに進んで行った経緯や葛藤、映像に対する想いなどを語ってくれました。

花盛 今年の春に放送された「情熱大陸」を観たんだけど、大学に通いながら映画監督もしているって本当にすごい。いつ映像に目覚めたの?

松本 ありがとうございます。小学生の頃だったかな、近所に「劇団ひまわり」があって、そこでダンスをやりながら演技のレッスンを受けていて。子役として何本か作品に出させていただいているうちに、私は出演するときにしか現場に行かないけれど、スタッフの皆さんは準備段階からずっと一緒にいて楽しそうだなって思ったんです。

あと、カメラにすごく興味があって、中学生の時に出演したドラマの現場にいたカメラマンさんが持っていたカメラを、撮影の合間に遊びで回させてもらったのですが、それがとても楽しくて!

花盛 それがカメラに触れた最初のきっかけだったんだ。実際にカメラを回してみて、それまで撮られる側だったけど、撮ってみたいっていう気持ちに変わった?

松本 最初はストーリーを作るというよりは、「この色味きれい!」とか、「このアングルいいな」といった写真を撮るような感覚で楽しんでいたのですが、中学2年生のときにクラスの友だちに出演してもらって初めて映画を撮りました。学校内で撮っていたので、先生に見つかってしまい、めちゃくちゃ怒られたんですけどね(笑)。

花盛 なるほど、そこで映像を作る楽しさに目覚めたんだね。しかし中学2年でなんてすごい!

松本 はい(笑)。高校生の頃、全国の映画好きな高校生が集まったサークルのような団体に入り、そこから本格的に映画を作るようになりました。同世代のカメラマン志望の子や、音声志望の子などと知り合い、17歳の頃に「真夏の夢」という作品を撮りました。夏休みの8日間と撮りこぼした分を秋に撮ったのですが、初めてみんなで作る楽しさを知りました。それまでは、カメラも音声もすべて自分でやっていたので。

花盛 高校生の頃も今も映像系の学校に行っているわけじゃないけど、どうやって映画の撮り方を学んだの?

松本 初めて映画を作ろうと思ったとき、何も分からなかったので、当時大好きだった映画「69 sixty nine」をひたすら何回も観続けました。

花盛 え、それだけ!?

松本 はい(笑)。なので最初の頃の作品は、とにかくダメダメで。「今回はうまくいかなかった、じゃあ次はこうしてみよう!」という感じでした。いつも満足のいくものではなかったからこそ、それが「もっともっと撮りたい!」という原動力になっていたんだと思います。

花盛 そこから始めて、その数年後には「脱脱脱脱17(ダダダダセブンティーン)」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭で賞を取ることになるじゃない? 当時は岩井俊二監督が絶賛コメントを出したことでも話題になったよね。

松本 岩井さんの映画って、ストーリーも素敵だけど、どこのショットを切り取っても一枚絵になるような映像で、強い憧れを抱いていたんです。その賞をいただいたとき岩井さんご本人から電話があり、「よかったよ」と直接言っていただいたんです!

共通の知人であるアイドル評論家の中森明夫さんを介して、一度だけ食事をしたことがあったのですが、まさかご本人から電話をいただけるなんて思ってもみなかったので、ただただ驚きました。

花盛 でも、こうして話を聞いていると「天才じゃん!」って思うんだけど、今までに挫折したことはある?

松本 もうめちゃくちゃあります! 17歳のときに監督、脚本、編集を務めた自主制作映画「脱脱脱脱17(ダダダダセブンティーン)」を撮り終わったときに、スタッフが離れかけてしまったことがあるんです。私が作品作りに夢中になりすぎて、まわりが見えなくなってしまっていたんですよね。「みんな一週間寝ないで!」みたいな感じで、ものすごく負荷をかけていたりとか。

あるとき、ゴミ屋敷のシーンが撮りたくて友人の部屋に勝手にゴミを撒き散らしていたら殴られました(笑)。部屋を借りる際にシーンのことは伝えていたのですが、ゴミといっても紙を丸めたものを転がす程度に考えていたようで。友人が好意で貸してくれた部屋に生ゴミを撒き散らすなんて思わないですもんね。それなのに私は「リアリティがなきゃだめだー!」とか言って。結局その子を本気で怒らせてしまって、まわりも「もう一緒にはできない」と言って離れていき、友人を失いかけました。そのときは、さすがにもう映像を作るのをやめようって思ったんです。

花盛 クリエイティブにこだわった結果だけど、自主制作だと難しいところもあるよね。離れそうになったスタッフをどう引き止めたの?

松本 本当にその通りで。私も相応なギャランティをみんなに支払えていたわけでもないのに、好意でやってくれている人たちに甘えた結果、本気で怒らせてしまったんですよね。

そのときも感じたのですが、映像を作ることを仕事にするならお金をきちんと稼ごうと思いました。自主制作はみんなの熱量が100%でいけるときもあるし、そうじゃないときもあって、いい意味で不安定ではあるけど、例えば商業的なものを作るとなってギャランティが発生すれば責任感も生まれますしね。

離れてしまった友人たちのこともあり、私も映画の自主制作に対する気持ちが離れてかけていたときに、別の友人が「秋元康さんが20年前に書いた小説を映像化しよう!」と誘ってくれたんです。「もう映像を作るのは無理」と思っていたのですが、原作を読んだらすごく面白くて、「これに賭けてみよう!」と思い、ご本人のところへプレゼンしに行ったんです。

結果、「映画だと少し長いからPVを作ってみる?」となり、アイドルのPVの監督をさせていただくことになりました。離れてしまった友人たちに、「今回は座組みがしっかりしているから、また一緒にやってくれないかな?」って何度もお願いして、徐々にみんな戻ってきてくれました。

花盛 そっか。でも一度離れかけてしまった友人も、きっと花奈ちゃんの熱意を理解してくれたんだと思うよ。秋元さんのところに直接プレゼンにいったというのも、すごく勇気のある行動だよね。

松本 幼い頃から何か形に残るものが欲しいと思っていたんです。中学生の頃、自分にあまり取り柄がないのがコンプレックスで。「これは私が作ったんだよ」と、死んだ後も残り続けるものが欲しかったんですよね。なので、最初は映像が大好きで始めたというよりも、ただ賞状が欲しかっただけなんです。

花盛 中学生の頃に子役としてテレビに出ているだけで、まわりから見たら十分「賞状もの」な気がするけど。

松本 全然そんな感じではなかったんですよね。でもきっかけは、「何か形に残るものを作ってコンプレックスを払拭したい」でしたが、今は嬉しいことにいろいろなことに関わらせてもらえて、毎日がとても楽しいです。

花盛 今はどんな仕事を手がけているの?

松本 「21世紀の女の子」という、山戸結希監督がプロデュースしている映画プロジェクトに参加しています。全部で12名の女性の監督が参加しているんですが、8分以内の短編集を作って1本のオムニバス作品にするプロジェクトです。

あと、私はアイドルが大好きなのですが、PVをまた撮らせていただいて、今はその編集作業をしているところです。それともうひとつ、7月26日からスタートする「恋のツキ」という深夜ドラマを、ちょうど撮っているところですね。台本を読みながら思いついたことをひたすらノートに書き込むので、台本とノートとは常にセットで持ち歩いています。

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HOLICS編集部

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